うだるような暑さが続くと、こまめな水分補給が欠かせません。そんなとき、「熱中症対策に良さそう」とスポーツドリンクや清涼飲料水に手を伸ばす方は多いと思います。私自身も、患者さんから「夏は何を飲めばいいですか?」とよく聞かれます。

でも、薬剤師として正直にお伝えすると——その一本を“毎日の水分補給”として飲み続けるのは、ちょっと待ってほしいのです。理由は、飲み物にひそむ「糖」。今日は、夏の水分補給との上手なつきあい方を、ポッドキャスト第5回の内容としてまとめます。

スポーツドリンクは「運動した人」の飲み物

まず知っておいてほしいのが、スポーツドリンクに入っている糖の量です。

商品によっては、500mlのペットボトル1本に、角砂糖にして十数個分もの糖が含まれていることがあります。以前、私が勤めていた薬局に管理栄養士のスタッフがいて、「この飲み物には砂糖がどれくらい入っているか」を、空のペットボトルに砂糖だけを入れて見せてくれたことがありました。ボトルの3分の1くらいまで砂糖が積み上がる——それを見たときの衝撃は、今でも覚えています。

スポーツドリンクは、もともと激しく運動した体が、失った糖分と水分をすばやく補うためのもの。だから糖がしっかり入っているのは、目的にかなっているんです。マラソンやサッカーのような、汗をたっぷりかく運動のあとなら、むしろ活躍します。

問題は、運動していないのに、日常の水分補給として飲んでしまうこと。「健康に良さそう」というイメージで、暑いからと何本も飲む。ここに落とし穴があります。

こわい「ペットボトル症候群」

清涼飲料水やジュースで水分補給を続けた結果、体調を崩してしまう。これには名前がついていて、「ペットボトル症候群」と呼ばれます。

仕組みは、こうです。糖のたっぷり入った飲み物を1日に何本も飲むと、血糖値が大きく上がります。ふだんなら、血糖値を下げるホルモン「インスリン」が働いて調整してくれるのですが、上がり方があまりに激しいと、インスリンがうまく働けなくなってしまう。すると体の調子が一気に乱れ、ひどい場合には強い脱水や吐き気、意識がもうろうとする状態にまで進むことがあります。

「熱中症対策のつもりが、かえって体調を崩す」——そんな皮肉なことが、実際に起こりうるのです。

じゃあ、夏は何を飲めばいい?

では、どう飲み分ければいいのか。私のおすすめは、シンプルに3つに分けて考えることです。

  • ふだんの水分補給 → 水
    いちばん無難で、いちばん頼れます。味がついていないぶん、飲みすぎても糖の心配がありません。
  • 本当に熱中症が心配なとき → 経口補水液
    OS-1などの経口補水液は、スポーツドリンクとは別物です。糖はほどほどに、塩分やミネラルがしっかり入っていて、脱水対策に向いた設計になっています。最近はゼリータイプもあって、夏バテや山登りのときにも使いやすいですよ。ちなみに、飲んで「おいしい」と感じるかどうかが、体の消耗度のバロメーターになることもあります。
  • しっかり運動したとき → スポーツドリンク
    マラソンや部活動など、糖を使いきるような運動のあとは、スポーツドリンクの出番です。

ポイントは、「その飲み物が“いつの自分”に必要か」を考えること。ただ暑い中を歩いただけなら、水で十分。せいぜい、あめと水があれば足りることがほとんどです。

「カロリーゼロ」なら安心、ではない

ここで、もうひとつ気をつけたい落とし穴があります。「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」の飲み物です。

砂糖が入っていないぶん、その甘さは人工甘味料でつけられていることが多いのですが、原材料表示を見ると「人工甘味料」とは書かれておらず、アスパルテームやスクラロースといった成分名で記載されています。これらは食品に広く使われている一方で、体調や健康との関連を指摘する声もあり、私自身は“ゼロだから安心”とは考えていません。

もうひとつ、清涼飲料水によく使われるのが果糖ブドウ糖液糖。砂糖より安く、少量で強い甘みが出るため、いろいろな飲み物に入っています。もともと液体なので体への吸収が早く、そのぶん負担も大きい。脂肪肝をはじめとした不調との関連が語られることも増えてきました。納豆のタレやキムチのように“少量”なら目を瞑ることもできますが、500mlの飲み物にたっぷり——となると話は別です。

さらに、甘味と一緒にカフェインが入った飲み物は、「おいしい」と「シャキッとする」が組み合わさって、なんとなく“また飲みたくなる”ようにできています。上手にできているなあ、と感心する一方で、無意識のうちに手が伸びてしまう点には注意が必要です。

とくに気をつけたいのが、お子さんのエナジードリンクです。部活やスポーツをがんばる子が「元気が出るから」と手にする場面が増えていますが、これらは糖に加えてカフェインもたっぷり。子どもは大人よりカフェインの影響を受けやすく、海外では子どもへの販売を制限する動きもあるほどです。ただでさえ興奮・脱水しやすい運動の場面で、糖とカフェインを一気に——というのは、体にとってなかなかの負担になります。(カフェインについては、以前の記事でくわしくお話ししています。)

まずは「ペットボトルの裏」を見るクセを

長くなりましたが、この夏いちばんお伝えしたいのは、とてもシンプルなことです。

飲み物を手に取ったら、まず裏の原材料表示をひっくり返して見る。

「果糖ブドウ糖液糖」や、聞き慣れない甘味料の名前が主役になっていないか。それだけで、選び方はぐっと変わります。日常の水分補給は水を基本に、熱中症が心配なときは経口補水液、しっかり運動したときはスポーツドリンク。この使い分けを覚えておくだけで、夏の体調管理はずいぶんラクになります。

ちなみに最近は、「炭酸水が頭の疲れをやわらげるのに役立つのでは」といった新しい話題もあります。こうした選択肢も上手に取り入れながら、自分に合った水分補給を見つけてみてください。

注意点

  • この記事は一般的な情報をお届けするものです。特定の商品や成分の良し悪しを断定するものではありません。
  • スポーツドリンクや清涼飲料水を「飲んではいけない」という話ではありません。目的と場面に合わせて選ぶ、という視点が大切です。
  • 強い喉の渇き・めまい・吐き気など、熱中症が疑われる症状があるときは、がまんせずすぐに涼しい場所へ移り、必要に応じて医療機関を受診してください。
  • 持病のある方(糖尿病・腎臓病など)・妊娠中の方・治療中の方は、水分や飲み物の選び方について、自己判断せず医師や薬剤師にご相談ください。

おわりに

夏の水分補給の話から、糖や甘味料、そして飲み物の選び方まで、話は広がりました。共通しているのは、「良さそうなイメージ」ではなく、原材料という“中身”を見て選ぼう、というメッセージです。

番組では、なおさんとゆんさんの2人が、この話をもっと肩の力を抜いた雑談としてお届けしています。家事や移動の合間に、会話の輪に入るような感覚で聴いてもらえたら嬉しいです。

「夏はいつも何を飲んでいますか?」——よければ感想で教えてください。次回の番組づくりの参考にさせていただきます。

ポッドキャスト『サブスクサプリ屋 〜不調改善ラジオ〜』

薬剤師の「なおさん」と聞き手「ゆんさん」が、日々の“なんとなく不調”を栄養と生活習慣の視点でやさしく語る番組です。今回の水分補給の話も、ぜひ耳からどうぞ。

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免責:本記事は栄養・健康に関する一般的な情報提供を目的としたもので、特定の商品・成分の効果を保証したり、診断・治療に代わるものではありません。症状が続く場合や体調に不安があるときは、医師・薬剤師にご相談ください。