「10月まで待ったほうが、いちばん流行する頃に効くのでは」「早く受けると、春まで持たないのでは」。インフルエンザの予防接種では、毎年この質問を受けます。今年はなおさらです。国立健康危機管理研究機構は、2026年第34週に全国で流行入りとなり、1999年以降で二番目に早い流行入りだったと報告しました。[1]

結論から言うと、「ピークの一日だけに合わせて遅らせる」より、接種できる時期に、流行前の準備を終えるほうが現実的です。流行の山は毎年同じではなく、接種後すぐに十分な効果が出るわけでもないからです。

まず知りたい、効き始めるまでの時間

厚生労働省の案内では、季節性インフルエンザワクチンの予防効果は、接種(小児では必要回数の接種)からおよそ2週間後に期待され、約5か月程度とされています。[2]ここでいう「効果」は、感染を完全に止める保証ではありません。発病や重症化を減らすことが期待される、という意味です。

つまり、地域で患者が増えてから予約を探しても、その週末を守るためのワクチンにはなりにくいことがあります。一方で、接種した翌日から5か月ぴったりで効果がなくなる、という時計のような話でもありません。年齢、体の状態、ウイルスの型、ワクチンと流行株の一致度によっても変わります。

「早いと春まで持たない?」への答え

この心配には根拠があります。2023年の系統的レビュー・メタ解析では、抗体反応は接種後1か月に上がり、その後6か月にかけて低下する傾向が示されました。ただし、典型的なシーズンを通じて抗体反応が続き、接種の利点は残ると結論づけています。[3]

さらに2026年のスコーピングレビューは、ワクチン有効性が1〜3か月で高く、その後3〜6か月で下がる研究が多い一方、接種を遅らせることに、集団全体で一貫して大きな利点があるとは示されていないと整理しました。遅らせる戦略が有利に見えるのは、流行が遅く、しかも効果の低下が速いなど、限られた前提が重なる場合です。[4]

少し余談:感染すると免疫の「追加刺激」になる?

ワクチン接種後にインフルエンザに感染すると、免疫が再び刺激され、抗体が増えることはあります。2012年の追跡研究では、季節性ワクチンを受けた後に2009年の新型インフルエンザに感染した人で、抗体反応が強まる現象が報告されています。ただし、当時の特定のウイルスでの結果を、すべての接種者にそのまま当てはめることはできません。[5]

「症状が出ない程度の接触でも、免疫が補強されるのでは」という考え方も研究で議論されています。2025年の小規模な研究では、接種後の抗体の推移からその可能性が挙げられました。ただし、これは研究者の解釈で、感染せずに少量のウイルスに触れたことによる効果を実証したものではありません。[6]

抗体が増えることと、予防効果が何か月延びるかは別の話です。「接種後は自然に免疫が補強されるから、シーズン中ずっと安心」とは言えません。感染には重症化や周囲へうつすリスクがあるため、この効果を期待して感染の機会を増やすことは勧められません。接種後も手洗い、換気、咳エチケットを続けましょう。

今年は「予約できる時期」を逃さない

例年の説明では、国内の流行は12月から4月頃、ピークは1月末から3月上旬とされ、12月中旬までに接種を終えることが望ましいと案内されています。[7]しかし今年は、すでに例年より早い流行入りが確認されています。未来のピークを正確に当てることはできません。だからこそ、接種開始時期になったら、地域の予約状況と家族の予定を見て、先延ばしにしすぎないことが大切です。

65歳以上の方、一定の基礎疾患がある方は定期接種の対象です。小さなお子さんは接種回数や間隔が年齢・製品で異なるため、早めに接種先へ確認してください。治療中の病気、服薬、過去の接種後の体調変化がある方は、予約時ではなく接種前から主治医・薬剤師に相談を。接種の時期を急ぐあまり、当日の発熱や体調不良を隠す必要はありません。

薬局での答えは、「今週打つべき」と一律には言えません。
でも、流行が早い年に「ピークまで待つ」ことには、接種前に流行へ重なるリスクがあります。予約可能日、接種後約2週間の立ち上がり、個別の体調を一緒に並べて考えましょう。

※この記事は一般的な情報です。個別の接種時期・接種可否は、接種医療機関の案内と医師の判断を優先してください。

参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構.IDWR 2026年第35号〈注目すべき感染症〉インフルエンザ:2026年第1〜35週(2026年9月2日現在).2026.(2026年9月18日参照)
  2. 厚生労働省.新型インフルエンザワクチンQ&A.2010年2月8日更新.「1.新型インフルエンザワクチンについての一般的な情報」問5.※季節性ワクチンの効果についての従来の目安を記載した資料.(2026年9月18日参照)
  3. Doyon-Plourde P, Przepiorkowski J, Young K, et al. Intraseasonal waning immunity of seasonal influenza vaccine – A systematic review and meta-analysis. Vaccine. 2023;41(31):4462–4471. doi:10.1016/j.vaccine.2023.06.038.
  4. Doyon-Plourde P, et al. Intraseasonal waning of influenza vaccine effectiveness and implications for the optimal timing of seasonal vaccination programs: A scoping review. Can Commun Dis Rep. 2026;52(6):231–245. doi:10.14745/ccdr.v52i06a03.
  5. Liu W, Ma MJ, Tang F, et al. Host immune response to A(H1N1)pdm09 vaccination and infection: a one-year prospective study on six cohorts of subjects. Vaccine. 2012;30(32):4785–4789. doi:10.1016/j.vaccine.2012.05.030.
  6. Choi MJ, Gwak W, Yun JY, et al. Exploratory evidence of mitigated immune imprinting following concomitant COVID-19 and influenza vaccination. npj Vaccines. 2025;10:271. doi:10.1038/s41541-025-01347-y.
  7. 厚生労働省.令和6年度インフルエンザQ&A.2024.問27「インフルエンザワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?」ほか.(2026年9月18日参照)